すみれの散歩道

心惹かれる宝塚や映画などについて綴ります

上田久美子作『バイオーム』アーカイブ配信感想 ネタバレあり

ドライブ日和なのに

www.umegei.com

★6月に観たアーカイブ配信の感想です。
途中でほっておいたので季節の挨拶が時期にあいませんがご勘弁ください。
またお芝居の内容も詳細は忘れているのでそんなに期待しないでください。
よろしければどうぞ。










日本各地より真夏日の報告がありますが、もしかして「ニッポンの梅雨」は開けたのでしょうか
内地の梅雨は平年7月半ばだったと記憶していますが今年はどうなっているのかな

そういう当地も梅雨が開けたとたん、毎日30度を超える猛暑に見舞われております
なので今日は一日家にいて午前中はお掃除タイム

そして午後から
スペクタクルリーディング『バイオーム』五感を揺さぶる朗読劇に参加
6/11のライブ配信には残念ながら参加出来ず
今回も見逃し配信+アフタートーク付き
宝塚歌劇団も見習ってね

スペクタクルリーディング『バイオーム』
日程:2022年6月8日(水)~ 12日(日)
会場:東京建物Brillia HALL

作:上田久美子
演出:一色隆司

出演:
中村勘九郎 ルイ:代々続く政治一家の息子
      ケイ: ルイの家で働く家政婦ふきの孫娘
花總まり  怜子:ルイの母親。一族の一人娘
      クロマツの芽
古川雄大  野口:父を継いで一家の庭師をしている。ふきの息子。
      一重の薔薇
野添義弘  克人:ルイ祖父。怜子の父親。一族の長。
      クロマツの盆栽
安藤聖   ともえ:怜子の傾倒する花療法士。
      竜胆役
成河    学:ルイの父親。怜子の夫。衆議院議員
      セコイア
麻実れい  ふき:ルイの一家に古くから使える家政婦。野口の母親。
      クロマツ
本作品ではそれぞれが1人2役を演じます




ルイ以外、人間役の時は衣装の上に豪華なジャケットやガウン、長いベストを羽織っています。
一見刺繍を施している様に見え豪華。

アフタートークは未視聴、というか期間を誤解して見逃した!
2回目視聴の途中で時間切れになっちゃった。
1日間違えた。

まさか再度配信があるとは思わず、あちこちのネット記事を読んでしまいました。
なので所謂「朗読劇」ではなく「お芝居」であること、花總まりさんの役と一人息子のルイがかなり精神的に追い詰められていることを知っての観劇でした。






★ネタバネありまくり、何かで観る予定の方はご注意を。








舞台の奥に煙の様な、大群の虫の様なものが集まってきて「バイオーム」の文字が浮かび上がります。
そして舞台中央にパジャマを着たルイ。
低い半円形の段の上に中村勘九郎と野副義弘以外の植物たち。
オトマトペを発する植物たち。
植物たちはセコイアから栄養を受けたり、人間のことを「けもの」と呼んで会話もできる。
踏まれると分かる、ゲロを吐かれると生温かさが分かる、殺虫剤を掛けられると嫌がる、お腹が空くのも分かる。


感覚はある
でも感情はない
ただ人間たちのことを観ているだけ


ルイが主人公ですが、私は群像劇として観ました。
ミュージカルではないし「ソロ」というのではないけど、それぞれの演者に「ソロ」の様な「場面」が与えられていた印象。

天井から長い簾のようなものが下がっていて、そこから演者が出入りします。
そして段の上に立つ演者の後ろにはそれぞれの植物の映像。
実は最初に見たときにメチャクチャ嫌な感じがして「クロマツが倒れたらすっきりした青空が見えるんだろうな」と思ったので最後やっぱり。
それほど暗く外界と隔てられた感が強かった。
その背景が暗転のたびに少しずつ色が足され照明が明るくなるのが綺麗。
それとは反対にどんどん出てくる人間たちの生々しさ、暗部。
最初それは男性演者の担当、ルイ祖父と父親。
あまりにも定型すぎる政治家とその婿。


一見大人たちに見守られているように見えるルイはクロマツの枝にしか止まらないフクロウを毎晩の様に庭で待っている。


実は途中までは、こんな豪華な演者を使ってなんで今更こんなテーマで脚本書いたのかと思って観ていました、ハイ。
古い家長制の中で抑圧される女性たち、それがその子供に引き継がれ、そして訪れる家の崩壊。
ひと昔前のよくあるテーマ、2時間ドラマにもありそうなお話です。
麻実れい花總まりとの関係も想像でき、その後も。

家督を譲る
家の内向きの事
100年ぶりの男子
総領娘
廃嫡
なんていう台詞あり。


上田さんは決して感覚だけで脚本を書くタイプでは無さそうなので、最初の私の感想も織り込み済みかも。
いつの間にかこのお芝居を楽しく観てました。
演出も良かったです。
途中、トップに立つ人の蘊蓄ではそれってタラカヅカの話ってなったり。
すいません、宝塚脳で。


他者には抑圧的で実はコンプレックスを持った成り上がりタイプの祖父を演じる野副義弘が、クロマツの芽で出てきたときの可愛らしさ。
それも植物たちが馬鹿にする盆栽になって登場するなんて、ナニ。
昔関係のあったふきを演じる麻実れい演じるクロマツを「お母さん」と呼ぶ軽いオゾマシサ。


ルイの父親、官僚出身の政治家である学は、望まれて怜子と結婚しルイが生まれる。
秘書と愛人関係を持ち「金には関心は無いが愛にはある」
義父に気を遣い勧められるまで椅子には座らず、全方位的に気遣いが出来、精神的に不安定なルイにも優しく父親らしく接する事もできる。
そんな普通の感覚を持っている男が義父に言われるが儘に跡取りを作ろうとするオゾマシサ2。

秘書との携帯電話での会話は一般企業に勤務経験がある上田さんだからこそかな。
男性は同性に認められたい願望があり、自分と同じような立場や能力がある同性にライバル意識が抑えられない、というのがちょっとあって面白かった。
パジャマのくだり。
成河、名前は知っていましたが初めまして。
色気のある役者さん、人気があるのが分かりました。


対局にいるのが古川雄大扮する野口。
ふきの息子で、、
この家の物語に決別できる人。
物語の終わりには舞台に一人残ります。
一重の薔薇にしては華がありまくり。


麻実れい、陰のように家長に仕え、母性溢れる支配者。
子供の頃テレビで観てこんな人がフェルゼンだったらアントワネットが好きになるのって仕方ないと思った記憶があります。でも麻実さんはやったことなんんですよね。大きな帽子を被って歌を歌っていました。
今回観ることができ満足。


中村勘九郎、8歳の男の子で女の子だった!
ケイはおしゃまな同級生の女の子、そして色んな事をちゃんと見ている。
ケイの時は長屋の女将さんチックでちょっと和物ぽく感じる時もあったけど、ルイからケイへの変化、そして2人のやりとり。
ルイにはケイが必要だったのね。


そして安藤聖
いつもどこかで観るけどこんなに意識して観たのは初めて。
詐欺師では無さそうだけど、極悪人では無さそうだけど、何だか怪しい花療法士。
言ってることってホントなの、ホントにそう思ってるの、でもこの位なら騙されたって言われないかもっていうのが良かった。
怜子が慕っていればいるほど、ともえの何ともいえないビジネスチックなスタンス。
切実なともえの訴えは決して怜子には届かない。
逆もそう。


花總まり、何よりも総領娘ってのが納得。
枝切りけものに命令する所に何故かきゅん。
真実を隠された家の中ではうまく自己の確立ができなかった永遠の娘。
最後はクロマツの芽とルイが舞台を去ります。

花總まりさん退団後、初観劇。遅っ。
だって『エリザベート』のチケット取れないんですもん。
早くストレートプレイの世界へ来て頂きたい。


今回演出が一色隆司
NHKエンタープライズ、エグゼクティブ・ディレクター
映像処理がお芝居の邪魔をせず綺麗でスッキリ、花療法の場面分かりやすかった。
宝塚でもそろそろ脚本家と演出家を分けて考えても良いでしょう。
得意不得意ありますから。



オノマトペ
フクロウの鳴き声
ルイの笛
人間の声


芸術に昇華する前の
日常耳にする目にする諸々に慰められています。







お読み頂きありがとうございました。
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